音の商標について(メールマガジン100号記念コメント)

みなさん、こんにちは!弁理士の齊藤整です。
日頃から商標調査等でお世話になっているインフォソナーさんのメールマガジン100号にあたり、商標にまつわる話を少し書かせていただきます☆

まずは簡単に自己紹介を。
神戸生まれの神戸育ち、大阪の某大学で社会学を専攻し、企業で2年ほどシステム関連の仕事に携わった後、大阪の某大手事務所に移って10年ほど商標業務を学び、この6月に大阪/阿波座のクレイア特許事務所(http://www.creia-pat.com)へパートナー弁理士として参画しました。
「商標専門家が関西で独立するのは無謀」という定説?!を覆すべく、日々楽しく仕事をさせて頂いております。

さて。最近は商標がらみのトピックスが多く、どのテーマを採り上げるか悩むところですが、個人的な趣味(弁理士業の傍ら、オーケストラでホルンを吹いています♪)から、今回は「音の商標」について少し書きたいと思います。

みなさん、商標と聞いて何を思い浮かべますか?「Infosonar」といった文字商標、絵やロゴからなる図形商標、ペコちゃん人形のような立体商標(最近ではコカ・コーラの瓶やマグライトなど、文字や図形が付されていない商品の形状について立体商標が認められて注目されていますよね!)・・・ぐらいでしょうか?

これら文字や図形といった従前からの商標(traditional marks)に対して、最近注目されているのが、音(聴覚)や香り(嗅覚)、手触り(触覚)、味(味覚)といった他の五感によっても識別され得る、いわゆる非伝統的商標(non-traditional marks)と呼ばれるものです。他の五感、と言いましたが、かかる非伝統的商標の中には、従前通り視覚で識別されるものもあります。たとえば、ホログラム商標や色彩のみの商標、位置商標(特定の位置に、常に同じデザインが施されているものなど)、トレードドレス(商品やサービスの総合的なイメージ)などがそうです。

この中で「音の商標」とは、たとえば、ゲームのテレビCMを思い出して下さい。画面を見ていなくても、「ピポーン!」という音が聞こえれば、「あ、任天堂のゲームだ!」と気づきますよね。一方、「ジョン!」という音が聞こえれば、「プレイステーション(ソニー)のゲームだな!」とわかります。
これらの音は、視覚に頼ることなく、出所表示機能を発揮しているといえます。昨年度に知的財産研究所が行った企業に対するニーズ調査では、実に63%の企業が、「音の商標」の保護を希望しているようです。

では、なぜこのような「音の商標」が今まで商標法で保護されてこなかったのでしょうか?ある商標が商標法の下で保護されるには、願書を提出し、特許庁の原簿に登録されなければなりません。今でこそ特許庁への出願は電子的に行うことができますが、昔はすべて紙で行っておりました。となると、音の商標についてはどのように紙で表すのか?という問題が出てきます。単純なメロディーであれば五線紙に音符を書いて提出すれば良いですが、メロディーのないもの、たとえば鳥の鳴き声などはどうでしょう??願書の商標欄に「鳥の鳴き声」と書いても、鳥の鳴き声は様々ですから、具体性や再現性に欠けると言わざるをえません。

しかしながら、特許庁の原簿が電子化され、パソコン出願/インターネット出願が普及した今となっては、音データの電子送信も可能となり、技術的な障害はなくなったと言えます。また、最近では日本以外のアジア諸国でも、「音の商標」やその他の新しいタイプの商標の保護について、法改正等の動きが活発化しています。

そのような中、我が国でも「音の商標」について現在着々と検討が進められておりますので、近いうちに商標法での保護が実現すると思います。

最後に、これら新しいタイプの商標が現在の法制度では全く保護されないかというと、そうではありません。一定の要件を満たせば、不正競争防止法でちゃんと保護を受けることができます。商標法と不正競争防止法の違いはとても面白いテーマなのですが、書き始めるとキリがないため、また機会を改めて採り上げたいと思います♪

2008年7月28日
齊藤 整
特許業務法人 クレイア特許事務所

                  ※本文中に記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。